この記事で伝えたいこと
この記事では、飲食店オーナーが廃業を決めたらすぐにやるべきことを解説します。
僕自身が元・飲食店のオーナーで、16年続けた飲食店を廃業した経験を元にお話しします。
廃業を決めたら、やるべきことはたくさんあるし、これにはスピードが求められます。
なので、廃業をしたものの何をやっていいか分からない…という状態ではどんどん関係者に迷惑がかかってしまいます。
なので、廃業を決めた飲食店のオーナーがやるべきことを7つリストにして解説していきます。
苦境の飲食店。オーナーの決断は「早ければ早い方が良い」
コロナの影響が長引いてます(2020年8月現在)。
飲食店は、軒並み売り上げダウンです。
それに追い討ちをかけるかのように、第2波第3波のコロナの波が襲って来そうで、東京都は再び営業自粛ともいえる時短営業の要請を出しました。
僕は人口43万人ほどの地方都市に住んでますが、そこでもすでに廃業してしまった店舗が数多くあります。
こんな中で、今でも頑張っている飲食店のオーナーは「廃業」という言葉が毎日頭の中を駆け巡っているのではないでしょうか?
このまま続けても赤字が膨らんでいくばかり。
客足が戻ってくる保証もない。
テイクアウトを始めたけどほとんど利益に跳ね返らない
来月の店舗家賃も払えるか不安
こんなことばかり考えてしまって、毎日が苦痛で仕方ないのではないですか?
廃業してしまえば楽にはなるかもしれないけど、開業した時の借金も残っているし、何よりも次にどんな仕事をして食っていけばいいのか…まるで分からないという悩みはどの飲食店のオーナーでも共通の悩みではないでしょうか?
ここで、ぶっちゃけ言います。
「廃業の決断は早ければ早いほど良い」です。
そもそも飲食店が軌道にのって利益を上げていれば、廃業など考えることはありません。
売り上げが少し落ちたとしても、やる気があって可能性が見えていれば廃業など考えることはありません。
もし、一度でも「廃業」を考えた、頭に浮かんだ、という場合はもうすでにかなり「無理」をしている状態なのです。
僕も廃業の決断が出来ずにウジウジしていた。その時、妻が…
僕も今から8年ほど前(2012年)に飲食店を廃業しました。
僕の場合はコロナの影響でもなんでもなく、単に自分の未熟さが原因でしたが。
それでも16年続けて来たお店を廃業する決断はなかなか出来ませんでした。
こんなことを続けていても未来はないなぁ…と分かっていながらも廃業の決断が出来なかったのです。
廃業を考え始めて、実際に廃業を決断するまでに、僕は5年ほどかかりました。
今考えると、5年早く決断していたら、もっと楽にもっと安全にもっとたくさんの選択肢の中から新しい人生が歩み出せたのではないかと思っています。
廃業の決断は「妻の一言」
「廃業の決断」と言ってますが、正確には僕自身では廃業の決断は出来ませんでした。
僕に廃業の決断をさせたのは妻の一言だったのです。
その時の僕は、自転車操業で食いつないで、綱渡りのような経営をして、金融機関もどこも追加融資くれるところはなく、サラ金ですら融資を断ってくるという末期状態でした。
その時妻が
「お願いだからもうお店をやめて」
と言ってきたのです。僕はまだなんとか一発逆転できるのではないかと思い込もうとしていたので、その言葉にちょっとびっくりしました。
そこまで家族に苦しい思いをさせていたとは気がついていませんでした。
その一言を言われた翌日、僕はついにお店の前に張り紙を出し、廃業を宣言したのです。
廃業の決断をした後、やることが山のようにある
廃業を決断したら、そのあとはやることが山のようにあります。
飲食店は開業するより廃業する時の方がはるかにやるべきことも多いし、パワーも必要です。
そして、廃業後の処理は「スピード」が重要です。
廃業後の処理をモタつくと、それだけ関係者にかかる迷惑が大きくなると思ってください。
とにかく、決断後は電光石火のごとくスピーディーに事後処理をしていかないといけません。
廃業するということでセンチメンタルな感傷に浸ってる暇はありません。
バリバリとやるべきことを片付けていかなくてはなりません。
飲食店廃業を決めた時にやるべき7つのこと
いよいよ廃業の決断をしたら、その瞬間から廃業のタスク処理をこなしていかないといけません。
廃業後はやることが多いのでスピード勝負だと思ってください。
その① スタッフへ通知
社員、アルバイトなど店のスタッフに一斉に通知します。
その時に伝えるべきことは、
- 未払いの給与の支払いについて
- 廃業に関わる仕事を手伝ってもらう場合はその依頼
- 貸与物などがある場合はその扱い
このようなことを端的に伝えましょう。
特に未払いの給与がどうなるかが、一番の心配事だと思うので、スタッフには、真っ先にそのことを伝えましょう。
ちなみに、スタッフへの給与は全てのものに優先して支払うようにして下さい。
返済や家賃などに回すお金は、スタッフへの給与支払いが完了してからです。
その② 物件管理会社または、大家さんへ連絡
物件を借りている場合は、その管理会社(不動産屋)または大家さんへ連絡してください。
賃貸契約で、賃貸契約の解除通知の規定がある場合があるので、これも早めに連絡しておいた方が余分な賃料を支払わなくて済みます。
連絡した時点から最短で契約終了になる時期を確認してください。
それが実質店舗閉鎖の期限になります。
その③ 内外装の撤去などを確認
お店をするにあたって、内装や外装を作り込んでいるような場合、その造作をどうするかを確認しましょう。
契約によっては、初期状態へ復帰(スケルトン)してからの退去となっている場合は、現場復帰にもお金がかかります。
ただ、大家さんによっては、初期状態へ復帰しないでそのままにしていって欲しいと言われる場合もあります。
その方が居抜きで次の借り手を見つけやすいからという理由ですね。
その場合は、いくらで買い取ってくれるのかを交渉となります。
もちろん、貸主側は買い叩いて来ます。
なんなら、お金を出して買い取るぐらいなら初期状態のスケルトンに戻してくれてもいいといわれ、そちらの方がはるかにお金がかかる場合、ただで内外装、厨房設備をそのままにして退去するオーナーも多いです。
ケースバイケースですが、そこは少しでも有利な交渉をしたいところです。
内装はそのままに、厨房設備だけリサイクルショップへ売却するという手もあります。
その④ 仕入れ先業者へ連絡
仕入れ先業者への連絡が必要です。
明日からの配達は不要であること、売掛金の支払いをどうするかなどを伝えます。
正直、仕入れ先業者へ売掛で仕入れていた場合、支払いが出来ないケースが多いかもしれません。
僕も廃業した時は、ずいぶん不義理をしました。今でも申し訳なく思っています。
でも、そこは見栄をはってもしかたないですので、正直に相談しましょう。
もちろん、時間をかけて少しづつでも支払いをするのが筋ですので、売掛金がある場合には支払う意思はあるが、時期を待って欲しいなどということを言いましょう。
あわてて回収に来る業者もいますが、先ほど書いた、スタッフへの給与や物件の退去費用が優先です。
それが完了するまでは支払わないようにしましょう。
その⑤ 金融機関などへ連絡
開業資金を借り入れた金融機関、追加で運転資金などを借りた金融機関などへ連絡をします。
もちろん、今後の返済方法なども考えなくてはなりませんが、それは金融機関の担当者との相談となります。
金融機関が県保証などの保証付融資で融資を実行していた場合は、県保証などが代位弁済などを行うため債権者が変わることもあります。
借りたものは返す…というのは、確かにその通りなのですが、そこまで心配しても仕方ないです。
これは、あくまで経験者の経験談と思って欲しいのですが、金融機関については、金融機関に丸投げしてもいいかと思ってます。
飲食店オーナーが何をどう返済計画を立てようが、廃業に追い込まれてしまっている以上、どうしようもありません。
「廃業しちゃいました。どうすればいいですか?」
ぐらい開き直って金融機関に委ねるのも手です。きっと、金融機関はいろんな知恵を出してくれます。
ただし。注意が必要なのは「リース会社」です。
誤解を恐れずに言えば、リース会社は銀行や信用金庫ほど優しくはありません。
すごく、厳しいです。
正直、僕が自己破産した時も最後まで抵抗してきたのはリース会社だと弁護士先生から聞きました。
リース会社がどう厳しいかは、また別の記事にして書きたいと思います。
その⑥ 行政機関へ届け出
飲食店を開業するに当たっては、行政機関へ各種の届け出を提出していると思います。
廃業する時も行政機関への届け出などが必要です。
保健所へ廃業届を提出すると同時に「飲食店営業許可書」を返納します。
また、飲食店の業態によっては警察署へ「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を返納したり、税務署へ個人事業の廃業届を出したりと、行政関係への手続きが必要です。
各種行政機関への届け出は、下記のようなのもあります。
居抜き売却市場というサイトから抜粋させていただきます。
各種届出について、提出日を時系列の観点から確認しておきましょう。「」内は届出書の名称ですが、異なることもあります。()内は提出先です。
特になし(速やかに)
「防火管理者選任(解任)届出書」(消防署)
「事業廃止届出書」(税務署)
廃業日から5日以内
「雇用保険適用事業所廃止届」(公共職業安定所)
「雇用保険適用事業所廃止届の事業主控」(年金事務所)
「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」(年金事務所)
廃業日から10日以内
「廃業届」と「飲食店営業許可書」の返納(保健所)
深夜酒類提供飲食店営業の「廃止届出書」(警察署)
風俗営業の「返納理由書」とともに「風俗営業許可書」の返納(警察署)
廃業日の翌日から10日以内
「雇用保険被保険者資格喪失届」(公共職業安定所)
「雇用保険被保険者離職証明書」(公共職業安定所)
廃業日から1ヶ月以内
「個人事業の開業・廃業等届出書」(税務署)
「廃業届」(税事務所)
「給与支払い事務所等の開設・移転・廃止届出書」(税務署)
事業の廃止又は終了の日から50日以内
「労働保険確定保険料申告書」(労働基準監督署)
翌年の3月15日
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」(税務署)
その⑦ 売却するものと捨てるものを分けて処分する
お店の中の備品やユニフォーム、店で使っていた車両など、売却してお金になるものは売却の段取りをしましょう。
売れないものは、捨てるか誰かに引き取ってもらうしかありません。
リサイクルショップにまとめて売却するか、面倒でなければメルカリやヤフオクなどで売っても構いません。
たとえ少しでも現金になる、また処分費用が安くなるような選択をしましょう。
廃業後の道
廃業後の仕事は?
飲食業のオーナーは、廃業後の行く末が心配になりますよね。
僕もそうでした。
飲食店のオーナーとして仕事をしてきて、いまさら他の仕事をと言われてもどうすればいいのか?全く想像がつきませんでした。
でも、何かしら働かないといけません。
今は確かに、コロナの影響で就職口も少ないかもしれませんが、それでも何かしらあるはず。
僕が言いたいのは、
自分は飲食業しか出来ないなどと思い込まないこと
ということです。僕も、飲食の世界から全く未経験で住宅営業の世界に飛び込みました。
この世の中でも、求人のニーズがたくさんある業界はあります。
例えば、
- 介護職
- ITエンジニア
- 解体業・産廃業
自分の可能性を限定しないでチャレンジして欲しいと思います。
新しい仕事では、オーナー社長だったプライドは捨てて、一から修行のつもりで頑張ればまた復活することができます。
僕がそうだったので、断言できます。
それでもどうしても借金が返せない…となったら
そうやって、新しい環境で頑張って再起をしていくのがベストです。
しかし、どうやっても返済できない借金を抱えていたり、働いても働いても借金が減るどころかさらに増えてしまうような状態になっている時は、債務整理を考える方がいいです。
僕も自己破産をして人生をやり直しました。
もちろん、デメリットもありますが、それ以上に人生をやり直す上では良いシステムだったと思っています。
自己破産以外にも、任意整理や個人再生といった債務整理方法もありますので、専門の法律事務所へ相談することをおススメします。
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まとめ
飲食業の廃業を決断するなら、早い方がいいです。
少しでも、廃業のことが頭を過ぎったら、それはすでに相当無理をしている証拠です。
無理して人生を悪化させるよりは、早く見切りをつけて、新しい人生を歩むのも大切です。
もちろん、最後まで努力は必要。でも努力し尽くしたら決断をする時です。
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