他の共有持分権利者と「顔も合わせたく無い」ような不仲の場合の処分方法について解説します
相続などで土地建物などの不動産を相続すると、相続人全員の共有名義になるのが原則です。
(遺言などが無い場合)
現金などを相続した場合は、それぞれ法定相続割合に応じて分ければそれでOKですよね。
ところが、不動産は
「相続した不動産をバラバラに切り分けてそれぞれが持ち帰る」
なんてことはできません。
土地だけであれば、上手に分筆(土地の境界を細かく分けること)して、それぞれがその所有者となることもできるかもしれません。
ただし、大きな土地を小さく切り分けると往々にして土地の利用価値が下がったりして、そう簡単に行かないのが現実です。
ましてや、建物が建っている場合などは物理的に切り分けることが出来ないので、相続して共有名義になってしまった場合は、相続人(共有者)全員の合意の元、不動産の処分を決定していかなければなりません。
この「全員の合意」しなければ不動産を処分できないというのが、相続して共有名義になった不動産トラブルの元凶でもあります。
今回は、
- 共有名義の不動産を売却するのはなぜ難しいか?
- 共有名義人と不仲で話もしたく無い場合はどうすればいいのか?
- どうしても合意できなかった時はどんな手段があるのか?
この3点についてそれぞれ解説していきたいと思います。
残念がら「相続が争続になる」ということは想像以上によくあります。
むしろすんなり解決していく相続の方が少ないぐらいです。
特に不動産に関わる揉め事は多く、相続不動産を処分できないまま放置して、それが昨今の空き家問題の大きな要因の一つになっているとも言われています。
この記事では、不動産を相続して共有名義となってしまった場合にどういう方法があるのかを知ってもらい、不仲だったり話し合いが決裂した場合の対処法も解説しますので、相続で揉めて悩んでいる人、近い将来の相続を考えると不安になってしまう方には参考にしてもらえると思います。
仕事で相続不動産の売買に何度も立ち会い、自らも相続不動産の共有名義人として不動産を売却した経験があります。
カンタンに僕(井ノ口将久)の自己紹介をします。
- 大手ハウスメーカーの元店長で、お客様が相続された土地に家を建築するお手伝いを何十件も行ってきた
- 行政書士としても開業しており、相続にまつわる相談を今も受けている
- 今は不動産売買仲介の仕事をメイン業務にしているので、土地がらみの争いも何度も見てきた
- 5年前に亡くなった父親の相続で、実家の不動産が姉との共有名義となり、その不動産を売却した経験がある
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そもそも共有名義の不動産って?
そもそも「共有名義の不動産」ってどんな状態の不動産なのでしょうか?
1つの不動産に1人の所有者なら話は分かりやいです。
「この土地建物は〇〇さんのもの」
というように、その所有者が明確ならば、不動産を売ろうが貸そうが自ら使おうが、制限を受けることはありません。
ところが、1つの不動産を複数の人の所有にするということも可能です。
その時は「持分」といって、不動産に対して何%の所有権があるのかを決めて登記しておくのです。
例えば、1つの不動産を三人で等分に所有している場合は、それぞれ三分の一づつの所有権を持っていることになります。
共有でそれぞれが持分を持って所有している以上、それぞれが勝手に売ったり貸したり、処分したりすることはできません。
共有名義の不動産を処分する時の決まり
少し、法律的な話になりますが、できるだけカンタンに解説します!
まず、不動産の処分とは何か?ということですが、
処分
不動産の処分とは、不動産の売却をはじめ、抵当権の設定や借地借家法に基づく賃貸借契約の締結、大規模な修繕工事などがこれに該当します。
こういった行為をする場合は、共有持分を有する全員の同意が必要になります。
つまり、共有名義人全員一致で合意しないと、売却・抵当権設定(担保に差し入れる)・賃貸借契約を結ぶ(誰かに貸す)・大きな修繕工事などが出来ないのです。
共有名義人=共有持分権者が処分以外でできること
上記の「処分」については、共有名義人全員の合意がないと出来ませんが、下記の行為については、全員の合意がなくても行うことが出来るとされています。
共有持分権者の保存と使用について
共有持分権者は所有する不動産に対して「保存」と「使用」する権利が認められています。
「保存」
経年劣化によって起こる不具合に対して、不動産の現状を維持することを目的とした、修理や取り換えなどの修繕することです。
この場合は問題箇所の性能や機能を問題なく使用できるぐらいにまで回復させることを指します。
「使用」
所有する不動産に共有持分権者が居住するなど、その不動産を利用することを指します。
この場合、共有持分の範囲だけ使用できるという訳ではなく、土地建物などの対象不動産全体を使用することも可能です。
これらの行為が可能であることは民法において明記されています。
共有持分権者の過半数の同意があれば利用と改良も良い
共有持分権者単独での行動では出来ませんが、共有持分権者の過半数の同意があれば下記の行為も認められています。
「利用」
不動産を賃貸物件として活用し、短期的に共有者以外に利用させることや賃貸借契約を解除することができます。この場合、土地は「5年」建物は「3年」といった基準「短期的」に当たる期間だとされています。
「改良」
上記に記載した現状を維持することを目的とした「保存」ではなく、不動産の価値を高めるために行うリフォームやリノベーション、改良工事などを指します。
共有名義の不動産を売却するのはなぜ難しいのか?
共有名義の不動産の売却はなぜ難しいのでしょうか?
それは、先に解説したように、売却のような「処分」にあたる行為には
「共有持分権利者全員の合意」
が必要になるからです。
3人の共有者がいれば3人それぞれの考えがあります。
所有している不動産を売りたいのか、貸したいのか、将来自分で使用したいのか。
全ての持分共有権者が同じ考えになることは少ないです。
兄弟3人で等分に持分を持って相続した場合、それまですごく仲の良かった兄弟が、共有不動産をきっかけに仲違いして口も聞かない間柄になってしまうなどは、普通によく聞く話です。
共有持分権者ご自身だけでなく、その配偶者や子供たちの思惑も絡んできて、すごく複雑な争いに発展することも珍しくありません。
また、同じ売却という選択肢で合意していても、その売却価格で折り合いがつかなかったりして、なかなかすんなりと売却にならないケースも多いです。
また、共有持分のまま時間が経つと、共有持分権利者自身が被相続人となり(自分が亡くなってしまい)、その子や孫にまで相続されていくと、持分権利者が細分化されてどんどん増えていってしまいます。
そうなると、もう誰が持分を持っていて、どこに住んでいるのかさえ分からなくなってきたりすることも実際にあります。
共有名義の不動産の有効な処分方法とは?
共有名義の不動動産をそのまま放置していても、せっかくの資産が「宝の持ち腐れ」状態になってしまいます。
なので、何らかの有効な使い道を考えていかなくてはなりません。
そのための有効な処分方法について解説します。
①売却する・賃貸に出す
共有持分権者全員の合意があって、売却してその売却金を持分割合に応じて配分する方法です。
これが平和に出来れば、有効な処分方法ですね。
また、これも共有持分権者全員の合意の上で、賃貸に回すという方法もあります。
賃貸で得た利益の配分を決めておく、物件の管理をどうするかを決めておく、など最初にしっかりルールを決めておくと後でトラブルになりにくくなります。
②他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう
不動産が共有名義のままだと、共有者全員の合意が必要になってくるので処分もスムーズに運ばないことが多いです。
また、先に触れたように、世代が子供や孫の代にまで相続で受け継がれていくと、持分権利者がどんどん増えて手に負えなくなることもあり得ます。
なので、早いうちに持分権者の誰か1人に持分を買い取ってもらうということもできます。
そうなると、共有名義の不動産が「単独名義」の不動産になるので、通常の不動産と同じように、その所有者が処分することが可能になります。
ただし、注意点が1つあります。
親族間であまりに安い価格で売買してしまうと、それは「贈与」とみなされて高額の「贈与税」が課される場合もあります。
共有持分権者に対しては「親族価格」ではなく「市場価格」を元に売買して下さい。
なので、ちゃんと宅建業者(不動産屋さん)を仲介に入れて、取引した方が良いです。
③自分が持分を買い取る
②とは逆に、自分が他の共有持分権者から持分を買い取るという方法もあります。
内容は②と全く同じです。自分が当事者になりますので、その後自分で不動産を使いたい場合などは持分を買い取って単独所有者になることもありですね。
他の共有持分権者と話が決裂、または不仲などで何も合意できない時は?
他の共有持分権者と話し合いがこじれて「決裂」したり、
昔から不仲で口も聞きたく無い、顔も見たく無いといった場合はどうすればいいのでしょうか?
その場合は、「裁判所に裁定してもらう」という方法があります。
共有物分割訴訟
先にも解説した通り、共有名義の不動産を所有している場合、他の共有者の同意がなければ単独でその不動産を売却することができませんよね。
なので、皆で話し合いをするのですが、必ずしも話し合いで解決できるとも限りません。
話し合いで解決できない場合、共有物分割請求を裁判所に訴え出ることができます。
これを「共有物分割訴訟」といいます。
ここで、勘違いをしてはいけないのは、いきなり「共有物分割訴訟」を起こすことはできないということです。
どういうことかというと、まずは裁判所の助けを借りずに、当事者同士で話し合いをしっかりしなさい、ということになってます。
この話し合いのことを「共有物分割協議」といいます。
この共有物分割協議をするということが共有物分割訴訟の前提になっています。
「協議」してから「訴訟」という流れです。
そこで、裁判の可能性を想定して、共有物分割協議を確かに行いましたという証拠を残す必要が出てきます。
もし共有者の誰かに、「協議をするなんて聞いていません」と言われてしまったら、訴訟を起こすことができなくなってしまうからです。
一般的な方法としては、共有物分割協議を行う旨を、内容証明郵便で送付したりして、客観的に証拠を残しておきます。
内容証明郵便などを送付しておけば、たとえ相手方が話し合いに応じてくれない場合でも、確かにこちらから協議の申し入れをしたという証拠が残ります。
裁判を起こす前に、調停によって和解を目指す場合もあります。調停とは、裁判所の調停員に交渉の間に入ってもらって、話し合いをする方法です。調停によって和解が成立すると、和解調書が作成され、裁判の判決と同等の効力を持ちます。
裁判所の裁定はどのようなものになる?
全面的価格賠償
部分的価格賠償は現物分割をした際の持分価格の過不足を、一部金銭の賠償によって精算しようとするものですが、全面的価格賠償は現物分割をせずに、共有者のうち特定の者に取得させて、持分を失った共有者へは金銭で賠償させる方法です。
代金分割を回避する有効な手段ですが、この方法も常に許容されているわけではありません。
代金分割
現物分割ができないときや分割によって価値が著しく減少するおそれがあるときは裁判所が共有物の競売を命じて、その代金を分割する方法です。
裁判など大袈裟なことはしたくない場合は他に方法はあるのか?
共有者同士は親族同士である場合がほとんどなので、いくら不仲であったとしても「裁判」までしたくないという気持ちがある人が多いです。
- 話し合いは合意しない
- 不仲で顔も見たく無い
- でも裁判はしたくない
こんな場合は何か方法はあるのか?ということになりますね。
自分の持分だけを第三者に売却するという方法
他の共有者と連絡を取らずに、何の承諾も不要で、自分の持分だけを売却するという方法があります。
共有持分とは言え、その不動産に対して数%〜数十%は所有権を持っていることに変わりはありません。
なので、その持っている割合の所有権だけを単独で売却するという方法があります。
もちろん、法的にも認められている権利です。
ただし。
これは一般の人を相手になかなか売却(買ってもらうこと)はできません。
共有部分だけを買っても先に解説したように、他の共有者の合意がない限りその不動産を自由に処分することができないからです。
自由に処分できないような物件を誰も買いたいとは思わないですよね。
一般的な不動産屋も持分だけの売却や買取にはなかなか応じてもらえません。
持分だけを売却するなら専門業者の「一択」
なので、持分だけを売却するなら「専門の買取業者」の一択です。
専門の買取業者は、共有持分だけの買取、競売物件の買取、再建築不可物件の買取など、一般的には難易度の高い、売買の難しい不動産を専門に買い取る業者さんです。
法律家と提携して一般では処分が難しい不動産物件だけを扱うプロ集団です。
注意点としては、買い叩かれないように気をつけなければいけないということです。
売買が難しい案件を専門に行っている「持分だけを買い取る専門業者」は、その専門性ゆえに、競合が少ない状態です。
なので、専門業者の「言い値」で取引してしまう事例が多いです。
まぁ、それもしょうがないのですが、「面倒なことは早く…」などとは思わずに、出来るだけ良い価格で買い取ってもらうように頑張ってみるのがいいです。
専門の買取業者でオススメは「コンサル会社系」
専門の買取業者さんには2種類あります。
①不動産業者系
②コンサル会社系
の2つです。
①の不動産会社系の専門業者は、文字通り自らが「不動産業者」で、買い取った不動産を自分で売却したり賃貸に回したりといったことで収益を上げる業者さんです。
それに対して②のコンサル会社系とは、自らが不動産業は行っていない会社になります。
持分だけの所有権を買い取って、それを投資家さんへ紹介することで収益を上げる仕組みです。
①は、不動産そのものが商品で、②は不動産での収益はなく、投資家さんからのコンサルタント費で利益を出しているのが大きな違いです。
ということは、
①は少しでも安く買い取って、高値で売りたいという考え。
②は不動産の買値にはこだわりはなく、投資家さんへの提案が全てという考え。
なので、①の不動産業者系の買取金額よりも、②のコンサル会社系の買取金額の方が高値がつく傾向にあります。
もし、共有持分のみを売却したいと思うならば、オススメは「コンサル会社系買取業者」ということになります。
コンサル会社系の買取業者とは?
では、コンサル会社系の買取専門業者とはどういう会社があるのか?
ということになると思います。
なかなか普段は聞かない会社ですよね。
ちょっと怪しいというか騙されないか、買い叩かれないか不安になる気持ちも分かります。
僕も知らない買取業者にはあまり相談したくないです(笑)
コンサル会社系の買取業者で、有名な会社は
株式会社NSリアルエステートが運営している
「ソクガイ.jp」でしょうか。
ここは、全国対応、24時間無料メール相談受付(最短で即日返信)、無料査定、最短3日で買取完了という
「持分だけを売却したい」という人には安心のサービス体制です。
もちろん、査定してもらって、そこで納得いかなければお断りすることも自由なので、一度問い合わせて査定してもらうのもいいですね。
まずは、メールでの無料相談から始めてみるのがいいかと思います。
(下記に「ソクガイ.jp」のリンクを貼ってきます↓↓↓)
まとめ
今回は「相続して共有名義となった不動産。他の相続人と不仲、話合い決裂の時にはどう処分すればいいのか?」ということについて、解説しました。
とくに、
- 共有名義の不動産を売却するのはなぜ難しいか?
- 共有名義人と不仲で話もしたく無い場合はどうすればいいのか?
- どうしても合意できなかった時はどんな手段があるのか?
この3つについての解説でしたが、いかがでしたでしょうか?
相続で共有名義の不動産になり得るということは、かなり前から分かっていることでも、いざその時になって初めて「どうしよう?」「まさか兄弟がそんなふうに思っていたとは…」ということになる場合が多いです。
もちろん共有持分権者全員が合意の上、不動産を有効活用出来ることが最善ですが、もしも話し合いが決裂したり、元々不仲である場合にも、様々な解決方法があります。
不動産相続した時にはまず感情的にならずにお互いの考えをしっかり聞き合って、不動産の有効な処分を検討していくのがいいですね。
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