「顧客満足の新三原則」だけでは生き残れない。意外な盲点「4つ目の原則」とは?

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顧客満足=CSを意識しても企業は生き残れないという現実

顧客満足度を上げていく。

どこの会社もこの意識は高いと思います。
実際にお客様のアンケートを取って改善したり、SNSをウォッチして常にカスタマーの動向を追ってみたり、クレーム対応の研修をしてみたりと常に自分たちの商品、会社を選んでもらおうと必死で活動していますよね。

顧客満足をを上げていくための原則として有名なのが

「顧客満足の新三原則」

というものです。
どの企業もこの新三原則に沿った企業理念と行動指針を策定して、少しでもお客様の満足度を上げようとしています。

ただし。
ちょっと酷なようですが、この顧客満足の新三原則を忠実に遂行しても、その業界で抜きんでた存在にはなれません。

それどころか、その他大勢として、遅かれ早かれ消えていく運命が待っています。

もしも、業界で抜きんでたナンバーワン企業を目指すのなら、顧客満足の深三原則+もう一つの「4つ目の原則」を実行すべきなのです。

この記事の内容

この記事では、業界でナンバーワンになって抜きんでた存在になるために行う、顧客満足の4つ目の原則について解説します。
僕の経験に基づく話ですので、必ずしもどの業界でも当てはまるものではないかもしれませんが、少なくとも参考にはなると思います。
この記事を読むと、新しい視点でのブランディングやより長くビジネスを続けていくヒントになるかと思います。

4つ目の原則に思い至った理由

なぜ、顧客満足の新三原則だけでは生き残れないと思ったかというと、実際に僕が経験したからです。

僕は、数年前まで飲食店を2店舗経営していた経営者でした。

僕は、中華料理店とラーメン店を経営していたのですが、当時のラーメン店としては割と珍しく、顧客満足の三原則を実践していた経営者だったと思います。

当時のラーメン店はまだ顧客満足というよりは、いかに旨いラーメンを提供するのか?に焦点が当たっていた時代で、顧客満足=納得のいく旨いラーメンを提供するというのが常識でした。

僕は、その中で、顧客満足の新三原則を学び、それにそった店づくりを行っていたのです。

それが、結果として、競合のラーメン店に勝つことが出来ず、長く続けた中華料理店の利益も食い潰し、わずか1年ほどで撤退、倒産、廃業という結果になったのです。

もちろん、経営手法の未熟さはありましたが、顧客満足の新三原則を履き違えたことも敗因の大きな理由だと思っています。

なぜ、自分は失敗したのか?

廃業してから数年間、全く分からなかったです。
戦略は完璧だったはず。
オペレーションも思ったように上手く行っていた。
価格戦略も悪くない。品揃えも味も良かった。
顧客満足度も意識した店づくりを行った。

なのに、負けたのはなぜだろう?

今でも、当時のお客様から「あんなに美味しいラーメンを作ってたのに、どうして辞めちゃったの?」と聞かれることもしょっちゅうです。

でも。

ようやく最近、理解しました。

僕は大きな見落としがあったのです。

それが「顧客満足の4つ目の原則」です。

ちなみに「顧客満足の新三原則」とは?

そもそも、顧客満足の新三原則とはなんでしょうか?

あれ?「新三原則」というぐらいだから「旧三原則」もあるってことですよね?

そうなんです。

実は、顧客満足には従来の三原則と、時代が変わって新三原則に進化したものとが存在します。

従来の顧客満足の三原則

従来の顧客満足の三原則は主に小売業が行う業務についての原則でした。

  • 商品
  • サービス
  • 店舗

これが従来の顧客満足三原則です。

商品とは、鮮度や品質の良さ、機能やコンセプトの明確さや品揃えの豊富さといった商品に関する顧客の要求に応えるべきものです。

サービスとは、明るくて親切な接客と購入後のフォローを行うことです。

店舗とは、いつでも使えて清潔できれいな売り場を意維持することです。

この3つを徹底することで、顧客の満足度は上がると言われていました。

顧客満足の新三原則

それに対して、顧客満足の新三原則は少し時代とともに変化(進化)します。

  • ホスピタリティ
  • エンターテイメント
  • プリヴァレッジ

この3つが顧客満足の新三原則です。

なんか、急にカタカナになっちゃいましたね(笑)

●ホスピタリティ
もてなしの精神です。お客様をいかにおもてなしするかという視点です。
単純に物を買いやすくするだけではなく、心を込めた感謝の意をどう伝えるか、お客様が良い気分でお買い物をしてもらえるかということですね。

●エンターテイメント
お客様を楽しませる遊び心という感じです。
一見無駄なことのように見えるかもしれませんが、物が溢れてしまっている現代では、いかに必要な物を購入するかというよりは、いかに楽しんで買い物ができるか?がお客様の満足度を上げていく指標になっていくのですね。

●プリヴァレッジ
ちょっと聴き慣れない言葉ですね。
プリヴァレッジを分かりやすくいうと「特別感」という感じでしょうか。
自分は他の顧客とは違うのだという感覚を持っていただく。
ファン化という言葉が流行りましたが、これもプリヴァレッジの考え方です。
ファンには特別なセールの案内や、特別な割引、限定商品の先行販売など特別な特典を提供することによって、顧客満足を上げていく行動です。

現代で「顧客満足」というと、この新三原則のことを指します。

この新三原則にそった行動が顧客満足につながると考えられています。

顧客満足「4つ目の原則」とは何か?

では、記事の冒頭でお伝えした「4つ目の原則」とは一体何でしょうか?

結論から言います。

4つ目の原則とは「愛すべき不便さの提供」です。

???

「愛すべき不便さとはなんだ???」

そう思われたと思います。

愛すべき不便さとは、その企業(ブランド)が持っている、独特の不便さです。

この不便さにお客様は惚れ込み、愛し、いわゆる「信者」が生まれていくのです。
これこそが「顧客満足」の意外な盲点です。

企業は、当然のことながらお客様の不便さを解消しようと日々努力しています。

それを間違った方向へ舵を切ると、せっかく愛していたブランドイメージが崩れてしまいます。

【例話】こだわりの靴職人の話

例えば、こだわりの靴職人がいたとします。

その靴職人はどんなに頑張っても1年に8足しか靴を作れないとしましょう。
だけど、その職人が作る靴は一級品の素材を使い、顧客の足形を丁寧に作り上げてから手縫いで仕上げていくという非常に面倒な工程を踏んでいるとします。
顧客は靴を注文してから長いと2年も待たされる羽目になる。しかも価格は1足100万円もします。
それでもその職人の靴が欲しくて、注文は数年先まで埋まってしまい、おいそれと予約注文できない状態です。
この靴職人が、顧客満足を考えて、少しでも不便な点を解消しようと考えたとしましょう。靴の工程を見直して一部裁断や縫製の機械の導入をしました。
足の型取りも最新のIT技術でセンサー式にして、計測の時間の大幅な短縮ができました。
注文もネットで受付、発送も迅速、今まで年に8足しか作れなかった靴が月に100足も生産できるようになり、品質はそのままなのに、価格を100万円から8万円まで下げることに成功しました。

どうです?
ちょっと極端な例ですが、この安く早く簡単に購入できるようになった靴。
その前の2年待って100万払って購入する靴とどう違いますか?

購入する満足度はどちらが高いですか?

誤解して欲しくないことは、僕は技術革新がダメだと言っているわけではないということです。
ビジネスとして、進化していくこと、利益を上げていくことは大事です。
なので、技術革新は大事だし、改善も必要です。
いつまでも古い伝統的なやり方に縛られるのがいいと言っているわけではありません。

ここは、あくまで「顧客満足」という視点でお話をしています。

もしも、その靴職人の靴が市場に豊富に出回って購入する層が増えたら経営者としては嬉しいですよね。
むしろそれを目指して経営しているのだと言ってもいいぐらいです。

でも、購入する顧客が靴を手に入れた時の満足感はそれまで以上には決してならないです。

なので、企業の利益も追求しながら顧客満足度も高めていけるなら、今まで通りの100万円で2年待ちの商品は残しておくべきで、それ以外のブランド戦略で購入しやすい層を取り込める商品を提供していく。

それまでの不便でありながらも、購入すること自体がステイタスのような商品は継承しつつ、新しい技術革新で利益を上げていくということが必要になってくるのです。

これが「愛すべき不便さ」というものです。

実際に経験した僕の事例

先ほどは例えばなしで「靴職人」話を書きましたが(もちろん架空の話ですよ!)

実際に僕が経験した事例をお話しします。

僕が経営していたラーメン店での話です。
先ほども少し書きましたが、僕のお店は実質1年ほどで廃業になりました。

それまで15年以上の中華料理店経営の経験がありましたし、実績もそれなりに積んでいたので新規参入とは言え成功させる自信はありました。

まして、顧客満足の新三原則も頭に入っていて、それに沿ったお店作りもしてましたので、まさか1年で廃業するとは思えませんでした。

まず、ホスピタリティでは、お客様に少しでも早くラーメンを提供するために革新的なオペレーションを考え出して、注文から2分以内にラーメンを提供できるように工夫しました。
また、20代~40代の男性客がメインだったこともあり、会計時には缶コーヒーのプレゼントもしました。
これはすごく好評でした。

エンターテイメントでは、店内にはジャズが流れ、モノトーンの店内で少しカフェのような雰囲気を出し手楽しんでもらうようにしました。
また、月替わりの新メニューでも遊び心のある季節限定ラーメンなどを出して、来るたびにワクワクしてもらえるような仕掛けもしました。

プリヴァレッジでは、当時としてはまだ珍しかった「メール会員」システムを作り、定期的に会員限定のサービスイベントを実施しました。特別割引だったり、限定裏メニューだったり。

これだけやって、もちろん味もこだわり抜いたメニューであったので、絶対に失敗しないと思ってました。
事実、わざわざ車で2時間もかけて毎週食べに来てくれるファンもいましたし、巷のラーメンブロガーのような人の間でも評価が高かったです。

なのに。

1年で廃業です。

それに比べて、僕の店から200mぐらい離れたところにあるDというラーメン店は、大繁盛してました。

もちろん、今でも大繁盛してお店を続けています。

そこのお店はいつ見ても外に長い行列が出来てました。
うちの店に長い行列が出来たことなんてほぼありませんでした。

一度、偵察もかねてDというお店に行ったことがあります。
開店時間をちょっとすぎたぐらいだったのですが、もうすでに長い行列が出来てました。

でも、ちょっと様子が違うのです。

行列に並びながら店内を見ると、席がいくつか空いています。
しかも、店内の広さの割に席数も少なく見えました。

実はこのお店、あえてお客様を店内に入れずに、グループごとの入れ替え制で営業していたのです。
前のグループが食べ終わるまで、次のお客様グループは店内に入れず、外で待ってもらうスタイルです。

つまり。
ワザと行列を作らせていたのですね。

僕は、当時「なんてお客様に不親切な店だろう」と思いました。

こんなにお客様に失礼なことをしていたら、そのうち潰れてしまうだろうとも思いました。

それがどうでしょう。

「Dってラーメン屋はいつも行列が出来てる」
「めっちゃ人気の店だな」
「いつかあの店で食べてみたい」

といった評判で、みんなありがたがって行列に並び続けるのです。

味は普通に美味しいですが、さんざん行列に並んでお腹がすいた状態で食べるラーメンは格別に美味しく感じるということもあるでしょう。

こんなことをする理由は、店主が一人で切り盛りしているお店だったので、そんなに早く提供できないというのが本当の理由とのことでした。
お店の中で待たれると、プレッシャーがかかってしまうから、外で待ってもらっていたとのこと。

従業員を雇うと、自分の思った通りの提供が出来ないと心配で、結局自分ひとりでお店をやっているといいます。

つまり、これ。これが「愛すべき不便さ」で、僕の店にはそれがなかった。

僕のお店は注文してから2分でラーメンを出すので、お店の回転が速く行列にならない。
行列が出来てないから、

「あのお店、いつ見てもお客さんいないね」

などと思われてジエンドです。

とは言え、無闇に不便にすればいいってものではない

そうか。

不便にすればいいのね。

と、そう思ったひとは要注意です。

ただ不便にすればいいわけではありません。
そこにはしっかりとした「不便であることの理由」が必要です。

思わず人に語りたくなってしまうような、明快な不便さの理由が必要です。

例えば、先ほどのDというラーメン店では、店主が他の人には任せられないから、納得のいくラーメンを提供するためにお店の外で長時間待たなくてはならない。

これが不便さの明快な理由です。

  • こだわりのあまり納品が遅くなる
  • 鮮度を大切にしたいから配送は関東圏内だけ
  • 1か月10個しか作れないから10個以上は売らない

など、明快な不便さが顧客満足につながります。

まとめ

顧客満足の新三原則だけでは、抜きんでた存在にはなれない。

そこには、愛すべき不便さを提供する勇気が必要。

不便さを排除するだけが顧客満足につながるわけではないことを知っておくべきです。

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