遺言書を書くには明確なルールがあります
相続をスムーズに行うために、また自分の財産を思い通りに処分してもらうために
「遺言書」を書いておくという方法があります。
民法の961条では、
「十五歳に達した者は、遺言をすることができる」
と規定されていて、15歳になった人は誰でも遺言をしておくことが法律で認められています。
遺言を残すための3つの方法
遺言を残すためには、3つの方法があります。
公正証書遺言
これは、公証役場の公証人に作成してもらう方法です。
公証人が内容を聞き取り、書き起こすため遺言の不備による無効はあり得ません。原本を公証役場で保管してもらえるので紛失のリスクもなくなります。
第三者(相続人ではない)証人が2人以上必要で、費用もそれなりに高額になります。(財産額に応じて)
秘密証書遺言
この方法は、自分で作成した遺言書を公証人に封印してもらう方法です。
遺言書の中身を知られずに遺言を残すことが出来ます。
また、費用も比較的リーズナブルな定額制です。
ただし、保管は各自行わなくてはならないので紛失のリスクはあること、中身を確認するわけではないので、遺言書の書式が間違っていたらその遺言そのものは無効になってしまいます。
自筆証書遺言
遺言者本人が作成し、保管しておく遺言方法です。
費用などはかからず、もっともポピュラーな遺言方法かと思います。
今回は、この「自筆証書遺言」の書き方と無効にならないための注意点を解説していきます。
遺言書の書き方には明確なルールがありますので、そのルールを守られてない遺言書は基本的に「無効」となってしまいます。
また、2019年の法改正で、書き方のルールが大きく変更になった点もありますので、そこの解説もしていきます。
この記事を読んで、正しい「自筆証書遺言」を残せるようにしていきましょう。
行政書士として相続相談を受ける時にアドバイスすること
僕は、不動産業と共に、行政書士業も行っています。
メイン業務は不動産に絡む農地転用や宅建業許可申請業務なのですが、不動産売却に伴って「相続」の相談案件もとても多く頂くようになりました。
多くの場合は、相続した時に親族同士でモメないか?といった心配ごとがその原因なのですが、その時にアドバイスすることとして、遺言書を残しておくことをおススメしています。
お亡くなりになられた後だった場合は仕方ないですが、まだ存命中である場合は相続でモメないように遺言書を残しておくべきです。
遺言書があったからと言ってモメない保証はないですが、少なくとも故人の遺志は伝えることが出来ます。
その時に、遺言書自体が無効であれば何の意味もなくなってしまいます。
そうならないために、遺言書の書き方と無効にならないための注意点を知っておきましょう!
自筆証書遺言の書き方
自筆証書遺言には書き方のルールがあります。
記載すべき内容を順に挙げていきます。
①表題(タイトル)
タイトルと言っても、その書面が遺言書だと分かるためのものですので、
「遺言書」
と書くのが一般的ですね。
②相続人の氏名
相続人とは、相続を受ける人のことを言います。
配偶者、子供、直系尊属(親)などがそれにあたります。
故人は「被相続人」と呼ばれます。
相続人の名前を戸籍通りに書きます。
「息子」「お母さん」などという一般的な呼称は避けます。
③相続
相続させるということをしっかり明記します。「譲る」「渡す」などの表現は避け、相続という表現で統一します。
④財産目録
具体的な財産を誰に相続させるのか、1つ1つ明記していきます。
【不動産】
不動産は土地と建物を分けて書きます。
「東京都○○区1-1の土地建物」というような書き方はしません。
登記簿謄本通りに記載しておけば間違いありません。
(登記簿謄本は土地と建物別々に存在する)
【預金・現金】
預金については、金融機関の口座が分かるように口座番号までしっかり書いておきます。
「○○銀行○○支店の口座番号1234567にある、遺言者名義定期預金のすべて」
などと表記します。
⑤遺贈
法定相続人以外の人で、財産を残したい人がいれば記載します。
⑥遺言執行者の指名
遺言を執行するにあたり、その遺言を執行する人=遺言執行者を指名しておきます。未成年者と破産者となっている相続人以外なら誰でも遺言執行者になれます。
弁護士や司法書士といった専門家に依頼しておくというのも方法です。
⑦付言事項
付言事項では、相続に関わる自分の考え、希望、理由などを書いておきます。
特に法的な効力があるわけではないですが、ご遺族にその遺志は伝わりやすくなると思います。
⑧日付
遺言書を書いた日付を明瞭に記載しておきます。
吉日、春の日に、などといった曖昧な表現はダメです。
⑨署名・押印
署名は必ずフルネームで記載します。遺言者が特定できる場合はペンネームなどでもOKとされていますが、後のトラブルを避ける意味でも戸籍通りの本名で記載しておくのがベストです。
また、押印は必ずしも実印でなくても構いませんが、特に理由がなければ実印でいいと思います。
自筆証書遺言が無効にならないための注意点
必ず本人の直筆で書く
自筆証書というぐらいですから、本人の自筆でないと認められません。
ワープロで印字して押印したものなどは、遺言書として認められないので、必ず手書きして下さい。
また、代筆もダメです。
字が下手だから、体の具合が悪いからといって他人に書いてもらったものは無効です。
録音、録画は不可
録音や録画による遺言は認められません。
手書きの文字で遺すのが決まりになります。
裁判所に検認してもらう必要がある
自筆証書遺言は、第三者の証人などが不要なため、法的に有効なものなのかを特定しづらいです。
偽造をされることだって可能です。
なので、遺言書を見つけたらその遺言書が有効かどうか、裁判所に確認してもらう必要があります。
これを「検認」といいます。
遺言書の存在を周知させ、大切に保管する
個人で勝手に遺言書を書いておいても、相続開始時にその存在を誰も知らないようでは意味がありません。
ちゃんと「遺言書を書いた」「○○に保管してある」ということを相続人たちに伝えておきましょう。
2019年の法改正で変更になった点
2019年の相続法改正で大きく変更になった点があります。
以前は、自筆証書遺言はすべて「自筆」が絶対でした。
2019年の法改正で、財産目録については、パソコン、ワープロでの作成が可能となりました。
財産目録は書き間違えの可能性もあり、しかも多くの財産がある場合には個別に表記するだけでも大きな負担でした。
こうした状況を踏まえ、財産目録についてはパソコン、ワープロでの表記も可能と改正されました。
また、財産目録だけ代筆もも認められ、さらには「登記簿謄本」「通帳のコピー」などを添付する方法も認められます。
ただし、財産目録以外は「自筆」が絶対なので、それ以外は従来通りの手書きが必須です。
まとめ
相続をスムーズに行うため、また故人の遺志を反映するためにも、遺言書は書いておくことをおススメします。
自筆証書遺言は、いつでも書き直しが可能で、仮に複数の遺言書が見つかった場合でも、日付の新しいものが唯一の有効な遺言書として扱われるため、今の時点の遺志を書き残しておいて大丈夫です。
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